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つくり手を訪ねて
Arietta 多比良 亞希さん

2013年9月

想いとこだわりの素材がずっしり詰まった「Arietta」のお菓子。
そんな美味しい焼き菓子を作る多比良 亞希さんの工房に伺い、お話を聞きました!


工房には、お菓子を焼くオーブンやキッチン、冷蔵庫はもちろんのこと、お料理やお菓子の本が並ぶ本棚、ショップカードなどを作るパソコンスペースなどなど・・・ひとりで何でもこなす亞希さんの工夫がつまっていました。

取材でお邪魔して早々、「甘酒カフェオレ飲むー?」と言って手づくりの甘酒でカフェオレを作ってくれた亞希さん!
「白糸酒造で飲んだのがすごく美味しかったから真似して作ってみた〜でももっと美味しかった気がする〜あはは!」と亞希さんは笑っていましたが、いやいやこりゃとても美味しい!
そして甘酒カフェオレと聞きつけたかのように、お友達のグーさんとサダアキさんが突然「おはよー!」と工房に入って来てくれました笑


【お友達に聞いた!亞希さんのこだわり】

せっかくなので、お二人に亞希さんのことを聞いてみると・・・昔から亞希さんと縁の深いグーさんは、「亞希ちゃんは冬のすっごい寒い時に、扉と窓を開けてビュービュー風が吹く中作ってんだよ!」と熱く語ってくれました。 それは、お菓子を作っているときに気が滞らないようにしているかららしく、ひとつひとつのお菓子に込められた亞希さんの信念の強さを感じますね。


そして亞希さんのお菓子を食べた人は誰しも思うことが、ここでも話題になりました!
それは、亞希さんのお菓子が「動物性のものが入ってなくてもお菓子としてしっかり美味しい」ということ。
これは、自分が食べて「心地良い」ということを大切にしている亞希さんが常に意識していることでもあります。
動物性のものが入っていないから食べた方がいいということではなく、純粋に美味しいから食べたいと思ってもらえるお菓子を作りたいという想いが伝わりますね。かく言う私もすっかり亞希さんの思惑にハマり、美味しいのでついつい食べてしまいます。

予期せぬ来客で盛り上がった取材でしたが、亞希さんは、この笑顔と気さくな人柄で誰とでもお友達になれる人だろうなと感じました。その中でも、やっぱり気の置けないお友達と居る時の亞希さんの笑顔はとびきりだったように見えました。そして、そんな亞希さんから元気をもらってるお友達は、きっとたくさん居るんでしょうね。


【亞希さんの歩み】

Ariettaを始める以前はレストランで10年間働いていた亞希さん。
中学生のころから料理をしていたこともあり、料理が好きで高校は専門の勉強ができる学校へ。その時に外部講師で来た洋菓子の職人さんが、目の前でモンブランを作ってくれたのを見てとても感動し、それがきっかけどっぷりとお菓子の世界へ・・・。
専門学校卒業後は、普通のお菓子屋さんには興味が無く、料理も好きだからとレストランを選び、仕事を始められました。
「レストラン時代はすごく忙しかったけど、いろんな料理の経験を積めて勉強になった」と語る亞希さん。そして!糸島のレストランと言えば、みんなが知ってる野北のカレント。亞希さんは、あのカレントのスイーツ部門の立ち上げをした張本人でもあります。

しかし、カレント時代に「ありあまるごちそう」という映画を見て、「もう普通のお菓子は作れない」と思ったことが大きなきっかけとなり2012年に独立。自分が食べて「心地良いかどうか」を大事にして追求していった結果、今のお菓子にたどり着いたそうです。

2013年7月


【「Arietta」名前の由来は?】

そしてまだ亞希さんの作るお菓子に名前が無かった頃のこと。初めて注文を受けてお菓子を作った時に色んな本や辞書を見て考えたものの、どれもピンと来る名前がなかったそうです。
しかしなぜか、突然に、「アリエッタ!」という響きが頭に飛んできたそうで、調べるとイタリア語で「そよ風」という意味だと知り、その場で「これだ!」と決めたそう。
この話を聞いたとき私は一瞬固まりましたが、とても亞希さんらしいエピソードだと納得!でもなんだかこの「Arietta」という名前と亞希さんの作るお菓子、やっぱりしっくりきますよね。


【素材へのこだわり】

「今は有機のものを中心に使ってるけど、オーガニックというよりは地元で採れるもので作りたい気持ちがある」と素材への想いを教えてくれました。そしていつかは、全て地元で作られた素材でお菓子づくりしていけたらいいな、という想いがあるそうで、
「きっと今度買う時は、海外のオーガニックより地元で顔がわかる人が想いを込めて作っているものを選んでいくと思う」と話してくれました。
この話を聞いて、強い信念を持ちながらも、自分の考えや環境の変化に対して素直に揺らいでいるところがとても素敵だなと思いました。これから色んな素材にチャレンジして、作られるお菓子が楽しみですね!


【実際に作ってもらいました!】


「落花生のビスコッティ」と「甘夏のココナッツのキューブクッキー」を作るところを見せてもらいました!

亞希さんがお菓子を作る姿は、「さすが長年お菓子づくりに携わってきた人は違うなあ!」という印象。
私たちの話をいつもの笑顔で聞きながらも、無駄のない流れるような動きであっという間に生地が仕上がりました。
亞希さんは「私、大雑把だからねー」と笑って言いますが、手早くかつ正確に生地をカットしていく包丁さばきは、とても丁寧で、すっかり見とれてしまいました。

2013年7月


【道具への想い】

写真にあるこの細長い包丁、レストランで働いていた時から10年以上使い続けているとか!他にも亞希さんの工房を見渡すとたくさんの道具があることに気づきます。
その中の作業台にあるデジタルの計量器の上には、空のボールが乗りっぱなしです。代わりに活躍しているのは、がらくた市で買った計り。
「古いからメモリが0に戻らないんだよねー」と言いながらも慣れた手つきで何度もメモリを調整する亞希さん。デジタル計量器を使わないのは「電池交換が大変だから」だと語りますが、単純な構造で愛らしい形のアナログの計りが、亞希さんには似合う気がしますね。
それからAriettaを始めたときに、新品で購入した生地を混ぜるミキサー。これもまた、ビニールをかぶって、すっかり工房の隅にしまってありました。
亞希さんは「手で出来ることは、手でやるようにしてる」と言います。これはすぐに納得!Ariettaのお菓子を食べれば、機械などで混ぜていないことはわかる気がします。
また、亞希さんの作るお菓子は生地がしっかり固めなので、混ぜる際にゴムベラではプラスチックの部分が折れてしまうのだそう。そこで、その折れてしまったゴムベラの柔らかい先端と強い竹べらをうまく使い分け、生地を混ぜていました。

他にも、中古で買ったガスオーブンやその横に積まれた天板などなど、ひとつひとつの道具を見ると、道具に対する想いを大切にお菓子づくりをしていることが伝わってきます。
それらの道具を自分の体のように使いこなす亞希さんには、本当にお料理やお菓子づくりの感覚が染み付いているんだなという印象を受けました。


【工房をたずねてみて】

亞希さんのお菓子は、ひとつひとつがギュッと詰まっていて、しっかり噛んで味わいたくお菓子です。形や色も素朴だけど、どこかオシャレ。なんだか人にあげたくなるようなお菓子です。
今回私も、明るく元気な亞希さんのパワーが詰まったお菓子を大切な人にプレゼントしたくなりました。そしてこの取材を終わってみて、亞希さんの気さくな人柄とお菓子に対する大きな想いを知れたので、トップ写真のビスコッティの生地を見たとき、「この生地があのビスコッティになるのかー!」と思い、この生地すら 愛おしい!と思うほどのファンになっていました。
これからも笑顔が魅力的な亞希さんが作る、美味しい焼き菓子に期待です!


インタビュー 前田 綾子
写真と文  山下 舞