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つくり手を訪ねて
BUCOLICA 村上 直子

2013年8月

着る人の「らしさ」に寄り添う、BUCOLICAの服たち。
作者の村上直子さんにお話を伺いました。


直子さんは、農学の大学院を出てすぐに旦那さんの研二さんと結婚。
茅木真知子さんの洋裁の本に出会い、洋服を独学で作り始め、ずーっと作って16年。

始めた当時は、何が難しくて何が簡単なのかも分からない状態でした。製図などを勉強してもそれがますます難しく、洋裁が分からなくなっていきます。
そんな「わからない」でいっぱいの時期を経て、洋裁教室に通い、製図を勉強していきます。

同時に縫製のアルバイトや1日洋裁教室の講師なども勤め、3足のわらじを履いていたこともありました。それがちょっとしんどくなった頃、研二さんの転勤で横浜へ。
そこからは、3足のわらじを全て脱ぎ、横浜でひたすら自分や研二さんの服をひたすら作るという毎日だったそうです。なんと3日に1着くらいのペースで作っていたとのことで、没頭ぶりが伺えます。


【ずーっと作り続けられる理由】

直子さんは「洋服はいつも作ってて楽しかった。こんなに長く好きであり続けるとは当時は思わなかった」と言います。洋服を一から作る過程で「ここはもうやらなくていいな」というのはなく、行程全てが好きなんだそう。
しかしはじめは、「このパターンでこの生地で」というオーダーも受けていたそうですが、「好きなことをしてて好きなものを作れない」のはつらかったと言います。
そこで「食べれる食べれないで判断するやめよう。自分の好きなものを作ろう。」と思い、委託やオーダーで作っていたブランドをやめ、好きな服を作るために2009年、「BUCOLICA」を始めました。

ところでBUCOLICA(ブコリカ)という名前。ラテン語で「牧歌」という意味があるそうですが、もともとは「バラちゃん」という直子さんのあだ名にちなんで、「B」のつく言葉にしたいという想いから来ているそうですよ。


【こだわり】

直子さんは「着てしんどい服は作らないようにしてる」と言います。
「見た目の美しさよりも長く着れる服を、それと同時に着て綺麗な服を作ろうとも思う」と。
展示会などでは、以前買った服を「こんな感じで着てます」と着て来てくれる方もいるそうです。それってきっとすごく嬉しいですね。

そして化学繊維をほとんど使わないのも直子さんのこだわりのひとつ。「自分があんまり得意じゃないから」そう言います。
その言葉を聞いて、BUCOLICAの服を好きな人は、直子さんのこの心地良さの基準や感性を好きになって、信頼して買うんだろうなと思いました。

そして農夫である旦那さんの研二さんは、今、綿花を育てています。
その綿花から布を、そして直子さんが服を作っていこうという試みです。今は、どれだけの綿花があれば服が作れるかも分かりませんが、まずはそれを知るところから。
確かに普段服を着ていて、綿花に思いを馳せることはほとんどありませんよね。その育った綿花から出来た服を見たら、きっと服への価値観が変わりそうですね。

ちなみに研二さんと直子さんは、お互いが仲間のような存在で、「よしっ」と肩を組んで一緒にやるぞ!という関係性。
まさに二人でひとつという印象です。これからもご夫婦二人三脚で歩んでいってもらいたいです。


【直子さんのこれからと壮大な計画!】

直子さんにこれからのことを伺うと、「なんかで「我々」って言いたい」とのこと!
「ずっとひとりでやってきたから、人とやったことがないんだよねー。これからのテーマかもしれない」と話します。
でも大きくしたいと思っているわけではなく、自分でできる範囲でできればそれでいい。「自分」と「相手」の付き合いでいいと思ってる。
自分にできることを喜んでくれる相手に出会える、今がちょうどいい。
思わず無言でうなづいた言葉でした。

そして、「壮大な計画を聞いてください...」と切り出されたその内容は、
「作業服の写真集を作りたい」でした。
アウグスト・ザンダーの写真集のオマージュで、「BUCOLICAの服で仕事をしている人の、仕事をしているいつもの顔を集めた写真集」を作る夢があるそうです。想像しただけで、とっても欲しくなりました!
そして服を作って売る、というところに完結しない目標を持ってる直子さんはやっぱり素敵だなと改めて思いました。


【取材の終わりに】

実は今回、私がずっと憧れてたグレーのボトムを直子さんに作っていただきたく、満を持してオーダーさせてもらいました!
事前にボトムの型とサイズを選び、裾の長さを調整。「少し厚めで、着心地が良いグレーの生地を」とワガママを言って生地を探しもらい、作っていただいたそのボトムは、私の想像を超える履き心地の良さ。そして鏡を見た時に自分を誇らしく感じました。

「少し起毛してて厚めの生地だけど、だんだん落ち着くんだと思うよ」
「自分の体に合ったダメージがすこしずつ付いて、時間かけて自分のものになっていくよ」

直子さんと話していて私が一番楽しいと思うのは、こうして「服の育て方」を教えてくれること。
「その人の個性や好きなものを乗っけられる服でありたいと思う」と語る通りに、直子さんの話を聞いて、服は私と一緒に生きる大事な存在なんだと感じました。
直子さんの想いがこもった服は、着る人が似合う似合わないを感じるのではなく、服が着てくれる人を選んでる気がしてしまいます。「あ、私これ着ると素敵かも」と思う服は、自分が服に選んでもらえたようで嬉しい気持ちになりますね。

みなさんも是非、BUCOLICAの「これだ」という一着に出会ってください。

インタビュー 前田 綾子
写真と文 山下 舞