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つくり手を訪ねて
DURAM FACTORY 中川 克彦

2014年6月

前原から507号線を通って、桜井神社に向かう道。
田んぼが続く風景を眺めていると、木々に囲まれたこげ茶色の建物とコンテナが見えてきます。近づいていくと「DURAM FACTORY」の文字。

ここが、糸島で数少ない革小物の工房「DURAM FACTORY」です。
代表の中川さんにお話をうかがいました。


【「家業です」】

代表の中川さん、と言ってもDURAM FACTORYはほとんどが「中川さん」。

代表であるお父さまの克彦さんがDURAM FACTORYを設立し、奥さまがお店番や革製品の製作までをお手伝いするようになり、最近では二人の息子さんも製作やホームページ、カタログなどのデザインで関わるようになり、現在は家族全員と2人の従業員で構成されています。

「家業です。」中川さんは、そう言います。


工房にお邪魔すると、たくさんの機械があり、これまでのインタビューとは違う風景にとても興奮しました!
製品のパターンごとに金型で切っていく機械、革すき機、革を一定の細さに切る機械、金や銀の箔押しも出来るスタンピングマシーンと錫(すず)で出来た名入れ用の活版などなど。
中古で手に入れたという、使い込まれた古い道具や機械もあり、とてもカッコ良かったです。昔のものって本当に丈夫ですね。

そしてその素敵な工房の中では、奥さまや息子さん、従業員の方々が真剣なまなざしで手際よく作業を進められていました。とても細かく、失敗できない作業をすごいスピードでこなしていく姿に圧倒されます。
それは一見、とても緊張感のある雰囲気に思えますが、しばらく会話や表情を見ていると、実は和やかな空気で、みなさん仲が良さそう。

中川さんも「ゆるい感じでやってます」とのこと。

家族みんなで働ける環境の整ったDURAM FACTORY。
ここに至るまでの中川さんの歩みを聞きました。


【DURAM FACTORYができるまで】

中川さんの出身は熊本県の八代。
福岡に来て「デザインの仕事がしたい」と思い製版会社へ、そしてその後雑貨問屋へ勤め、営業や仕入れのお仕事をしたそうです。ここから中川さんの雑貨に携わる人生が始まります。

雑貨問屋に勤めた後は、よく遊びにいくデザイン会社の机を借りて、ご自身で雑貨を作り始めたとか。そこから全国的にも有名になる生活雑貨メーカーを立ち上げることになります。
そのメーカーを退職後も、さらに文具メーカーを立ち上げ、またしても名の知れたメーカーになっていきます。

雑貨問屋に勤めた30数年前を振り返り、「当時はまだ、『雑貨』という言葉もない時代だったからね」と中川さん。
「雑貨」は今では当たり前の言葉ですが、数十年前の日本にはインテリアやこだわりの小物を楽しむという文化が根付いてなかったんですよね。そう思うと、中川さんは大きなライフスタイル変化の波を作ったひとりだったと言えそうです。

その一方、中国や台湾、フィリピンなどで大量に生産され、どんどん売って、売れないものや飽きられたものは捨てられていく当時の雑貨の世界を見て、「なんだかなあ」という想いを抱くようになります。

「丈夫で長持ちして、ずっと使い続けれるようなものを作りたい」と想いを巡らせる中、当時取引してたレザーメーカーの商品を見たときに「これだ」「こういうものを作りたい」と思ったそうです。
ずっと持ってても古くなるだけでなく、風合いが出てきて自分のものになる。
そんな魅力を感じて革製品を作り始め、DURAM FACTORYを設立します。

「DURAM」とはポルトガル語で「継続する・持続する」という意味を持つ言葉で、現地でもなかなか使われない言葉だとか。でも「ドゥラム」という音の響きはインパクトがあって、一回聞いたらなかなか忘れないですよね。それも中川さんのねらいだったようです。

そして今年で9年目になるDURAM FACTORY。こだわりを聞きました。


【製品のこだわり】

革の種類は、シボが入ってる革、つるっとした革、柔らかい革などの3〜4種類で、色は5色、厚みは3種類のバリエーションがあります。ひとつの製品でもパーツによって厚い所、薄い所を使い分けるなど、それぞれの製品の特徴に合った革を使います。

また、使用しているほとんどの革は植物性のタンニン鞣し。
化学薬品を使うクロム鞣しとは違い、手間暇かかりますが、使い込むほどに色や質感の変化が楽しめ、手入れをするほどに馴染んでいくのが特徴だそうです。

それから使用している金属のほとんどが、メッキを施さない無垢の真鍮。
その理由は、「いつも触れるところには風合いが出てきて、ずっと使いたくなる素材だから」。
革も真鍮も、長い時間をかけて自分だけのオリジナルに育っていくのですね。

デザインに関しても、シンプルで男女問わず使え、飽きのこないものばかり。
中川さん曰く「シンプルなものは綺麗だし、使い勝手もいい」。
余分な装飾を省き、使い勝手と美しさを追求したのがDURAM FACTORYのデザインなんですね。

ただ、中川さんは何より「自分が好きなものを作る」ことを大事にしていると言います。
カメラストラップもカメラが好きだからたくさん作ってしまうんだとか。

でも好きという気持ちから、シンプルで美しい、且つ暮らしに馴染むデザインへ落としこんでいけるのは、中川さんの雑貨業界での経験と知識とノウハウの賜物のようです。簡単には真似できませんね。


【これから】

現在、DURAM FACTORYの新商品は9月と2月の年2回、発表されています。来年からは大きめのバッグも作る予定だとか。

しかし中川さんは、「『長く使えるもの』を作っていきたいから、あまり革だけにこだわりたくもない」とも言います。
木や金属、そういった長く使える素材といつかコラボできたらなという想いもあるそうです。

そこで、中川さんに「今後はデザイナーみたいにプロデュースする立場になっていくということですか?」と訊ねると
「んーやっぱ作り手だよね、作ってた方が楽しい。そしてデザイン考えるのが楽しいよね。それをみんなが使ってくれるのが嬉しいもん」
と胸が熱くなる言葉をいただきました。

そして、家族で工房を営むことに関してお聞きすると、
「息子たちが、世の中に出ていろんなものを見て、疑問を持ったりして、帰って来れるような場所があればと思った。もし息子たちがやりたいんだったら俺の仕事をさせてあげたいなと思っていた。」
と語ってくれました。

DURAM FACTORYのホームページやカタログの制作を担当されている長男さんとは、現在、大阪と糸島の遠隔で一緒に仕事をしているそうです。
便利な時代ならではの家業の形ですね。

「でもこれは新しいんじゃなくて、昔から、息子が家業を継ぐという形はあったんだよね。けど最近なくなって来ているから、また広がっていったらいいだろうなと思う。」
と中川さんは言います。

積極的に新しい情報やテクノロジーを取り入れ、昔ながらの技術と働き方で営むDURAM FACTORY。
ただ中川さんが、自分の好きなもの・使いたいと思うものを作る。それはこれからもずっと変わらないようです。
奥さまも2人の息子さんもやはり、「好きを形にし続けるお父さまの仕事」が好きで、一緒に働いているんだろうなと感じることができました。
「好き」で家族がひとつになるってとても素敵ですね。


インタビュー 前田 綾子
写真と文   山下 舞