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つくり手を訪ねて
にしはら みのり

2014年6月

築30年の古〜いアパートのかど部屋。
外から建物を眺めていると、ベランダに綺麗な緑や花が並ぶメルヘンなお部屋がひとつだけあります。
ここが糸島の絵本作家、「にしはらみのり」さんの物語や繊細な絵が生み出される場所です。

ふわ〜〜とした空気感を持っているみのりさん。
彼女に会うと私はいつも、へへ〜っと顔も気持ちもゆるみ、一緒に話しているだけで自然とのどかな気持ちになっていることに気づきます。
そうした感じのみのりさんですが、話す時は、いつも真っすぐに目を見て話をしてくれるのがとても印象的です。
今日は、初めてご自宅に伺って、絵本のお話を聞きました。

【絵本作家「にしはらみのり」がうまれたきっかけ】

彼女が絵本作家を目指すようになったきっかけは、大学の頃。
デザイン学科に通っていたみのりさんは、大学3年生の時、著名な講師も来ていたという絵本教室に通い始めます。
そこで、後に絵本作家として第一作目となる「いもむしれっしゃ」の原型が作られました。
そして4年生の卒業制作で、その「いもむしれっしゃ」を描き直し、コンペに応募すると、見事受賞。
この入賞をきっかけに出版依頼を受け、さらにもう一度描き直したものが、PHP研究所から出版されている「いもむしれっしゃ」。こうして2度の描き直しを経て、やっと世に出て、みなさんの手に渡るのでした。

【絵本のうまれかた】

みのりさんが絵本を作るときは、まず「こんなシーンがあったら面白いな」という絵が浮かぶそうです。
そこから物語を考えて、こんな絵で・・・と進めて行くそう。
自然と向き合い、じっくり観察し、勉強しているからこそ、こんなに繊細な世界が描けるのでしょうね。

【絵本になっていく】

窓辺の大きな机に向かって鉛筆を動かすみのりさんの姿は、とても柔らかな印象で、そこには私が知る「いつものみのりさん」がいました。
「なるほど彼女の絵本たちにも、みのりさんの柔らかさがそのまま出ているんだな」と思い、私はふんふんと納得するのでした。

この日見せてもらったのは、第三作目の苔(こけ)をモチーフにした絵本の制作過程。
机の横には、様々な種類の苔の写真が貼られていて、「苔はたくさん種類があるけど、光合成するから緑で〜」と色んな苔知識を話してくれました。

苔を題材にしようとおもった理由を訊ねると、ふと「苔が海に浮かんでる島に見えて、その島から島に旅行とかできたら面白いな」と思った、とのこと。
普通に苔を見ていたのでは、なかなか思いつかない発想ですね。

月並みな感想ですが、「やっぱり目のつけどころが違うな!」とお友達ながら改めてそう感じました。

【最近のこと】

最近は園芸にハマっているみのりさん。ベランダの可愛らしい鉢植えは、マイブーム真っ只中のそれでした。
なんと「園芸を極めたいな〜」とのこと。
そしていずれは「ホームセンターの園芸用品売り場の人がいる箱に入りたい!」とみのりさんらしい不思議な夢も聞かせてもらいました。(レジのある小さな事務所のような箱のことみたいです)

【おわりに】
短いお話の中で、そして一枚の絵の中で、多くのことを気づかせてくれる絵本。長く読み継がれるそれは、歳を重ねて読み直しても、懐かしさの中に新鮮な発見をもたらしてくれるような気がします。

それは描き手が、見て、聞いて、調べ、考えたたくさんのことをその人にしか描けない絵と紡げない物語で、じっくり時間をかけて形にしていくプロセスがあるからこそ。
どこまでも素のみのりさんが、みのりさんの感じるままに吸収し、「いつものみのりさん」で描く絵本。そのほがらかな人柄は絵本のページから、そのまま見て取ることができます。

絵本作家以外の活動でも、小学校の学童保育で子どもたちを見たり、いとしまこよみ舎での暦を作る活動に参加するなど、本当に色んなことに関心のあるみのりさん。
絵本以外の活動で広がって行くみのりさんの裾野と、その裾野に支えられて深みが増す絵本作品。今後どちらにも期待ですね!

インタビュー 前田 綾子
写真と文   山下 舞

にしはら みのり


1983年、福岡県生まれ。九州産業大学芸術学部デザイン学科卒業。第6回ピンポイント絵本コンペにて優秀賞を受賞し、受賞作『いもむしれっしゃ』でデビュー。おっとりした糸島育ちの絵本作家。人の心をほぐし、ホッとさせる安心感を与えてくれる不思議な女性。

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