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つくり手を訪ねて
マイマイ計画 野島 智司

2014年6月

ネイチャーライターとして、自然や生き物に関する執筆活動をする傍ら、自然と人とのつながりを紡ぐ「マイマイ計画」を主宰する野島智司さん。

野島さんといえば、おがくず粘土をつかった「へんてこどうぶつ」や「へんてこおやつ」づくりなどのワークショップが人気。
毎月、糸島くらし×ここのきが主催する「糸島くらしマーケット」でも、野島さんにワークショップを開いていただいています。
そこにはいつも子どもたちが集まり、ゆったりした時間の中で作品づくりに夢中になっています。

この日は「おがくず粘土ができるまで」と、ワークショップで使う「自然素材あつめ」に同行させてもらいました。


【おがくず粘土の作り方】

おがくず粘土の材料は、 おがくずとでんぷんのりのたった二つ。
まず材料になるおがくずは、志摩師吉にある杉の木クラフト・溝口さんの工房にいただきに行きます。

工房に着くと、野島さんと溝口さんの慣れた様子のやりとりがあり、さっそく溝口さんが集塵機の中からおがくずをすくい出してくれます。
ひとすくいする度に、細かい木くずが舞い上がり、溝口さんの腕や体は真っ白に。
でもどうやら、いつものことみたいです。

溝口さんと野島さん。
交わす言葉は少ないけれど、 溝口さんの朴訥とした人柄と野島さんの真面目でひかえめなところが不思議と調和しているように感じます。ふたりのやりとりを見ている私が心地良い気分になりました。

そうしてこの日は、大きなビニール2つ分のおがくずといくつかの端材をいただいて、私たちは野島さんの自宅兼工房へ。


おがくずはまず、「やすりがけをした時に出るとても細かい木くず」と「少し粗い木くず」の2種類をふるいながらブレンドします。
次は、ブレンドしたおがくずにでんぷんのりを混ぜます。
この時、ベタベタにならないように直接のりを触らないのかコツだそうです。のりをおがくずで包むようにして、始めは優しく触りながら、段々のりがなじんできたらお菓子の生地をこねるように手のひらでしっかり握ります。
できあがったら一回のワークショップで使う量に分け、ラップでくるんで冷蔵庫で保管します。
冷蔵庫で密閉して乾燥と腐敗を防げば、結構長く持つそうですよ。


【自然素材あつめ】

おがくずねんどを作ったあとは外に出て、ワークショップで使う植物の種子や葉っぱを見つけに笹山公園へ。

笹山公園は筑前前原駅南の高台にあり、桜の季節にはお花見で賑わう公園。
私も何度か訪れたことがありますが、いつも人が集まるところより、もっと高台の開けた草地が野島さんの採集スポットでした。
フェンスの先を指して、「ちょっと下の方まで採りに行っていいですか?」
と聞いたかと思うと、雨上がりで滑る急斜面を慣れた様子で上手に下っていき、あっという間に遠くまで行ってしまいました。

そんな野島さんを遠くから眺めながら、「野島さんの中に、私たちが普段生活している道や見えている境界とは異なる地図がある」のだと感じました。

それは植物や生き物が中心の世界の地図。
人間のために意図的に設えられた場所や時間の文脈と関わりながらも異なるレイヤーが、目の前に広がっていたことにふと気づきます。

ちなみに素材を集めるときは、実っているものをちぎらず、できるだけ落ちているものを拾い、遠い土地でワークショップをするときは、発芽する状態で種を持っていかないように注意しているとか。これは、種を運んでしまって生態系を壊さないようにとの配慮なんだそうです。

車で走っていても「あ、蛇。」
道を歩いていても「ムカデだ。」
と次々にいろんなものを発見する野島さん。

私たちがスタスタ歩いていると、いつの間にか居なくなり、振り返ると座り込んで何かを拾ったり眺めたりしていることが度々ありました。
私も一緒にしゃがんで近寄って見ると、小さな生き物や樹々が落とした種、綺麗な枯れ葉がこんなにたくさんあるのだということに気づきます。

なんだか野島さんは、とっても倍率の高い顕微鏡を持っていて、小さい小さいものがよーく見えているような感じ。
こうして一緒に歩くだけで、自分がいかに身近なものに目を向けていなかったかに気づかされました。


【野島さんと歩いて】

何か質問をすると、ちょっと間をおいて、叱られた子どものように、とつ、とつと話し出す。
そんな野島さんのリズムに、私はどことなく、自分が忘れてたものを拾うような感覚を覚えます。

ただ彼は、現代におけるどんな大人より大人であるように思えて、彼の言う「息苦しさを感じやすい現代」において、きっと特別な存在かもしれないと感じました。

言うなれば、私たちの世界に一緒に暮らす大小さまざまな命のことを考え、利己的ではなく、とことん優しい、そんな印象の人でした。
そしてきっと、彼が大事だと思うことを少しずつ着実にやっていく姿を見て、周りの人が「野島さんにしかできないことがある」ということをそれぞれに気づいていくのかな、という気がしました。

言葉で表すのは本当に難しいですが、野島さんと話していると、何も隠されていない気がするのに、何度会っても知ることができないほどの深さを感じて、不思議な気持ちになります。


彼自身が、多くを語らずたくさんのことを教えてくれる木や草花や小さな虫たちのような、私たちの身近にある自然を体現している存在なのかも知れませんね。


野島さんは、
「私たちの身近にある自然は、
お金をかけず、人を選ばず、
すべての人々の生活を、
等しく彩ってくれる大切な存在。」
だと言っています。

そんな自然を遊び、食べ、楽しみ、繋がって欲しい、と。

明日、いつも通る道で空を見上げるだけで、立っている足元をよーく見てみるだけで、自然からいろんな発見をもらえるかもしれませんよ。


インタビュー 前田 綾子
写真と文   山下 舞